150周年

リレーエッセイ

造幣局創業150周年に寄せて

元広島支局貨幣第一課主任作業長 佐藤 実

造幣局での勤務で特に印象に残ったこと

一つは、造幣局での初めての両面面削機の導入です。これは圧延板の表・裏の酸化した部分を削る機械で、当時は民間でも両面を削る機械は普及しておらず、関連情報が入手しにくい状況でした。試行錯誤の繰返しでしたが、問題点を一つ一つクリアし早期稼働させることができ、製品が出来上がった時の感動・達成感は今も心に残っています。(面削機が導入された時、私を誘ってくれた先輩には心から感謝しています。やりがいややる気が沸き、そして仕事仲間、同僚とのチームワークの大切さを実感しました。)

もう一つは、二交替制勤務が導入されて勤務体制が大きく変わり、早番・遅番時の食事や就寝時間の違いを頭と体に覚えさせることに苦労したことです。作業面では、夜勤時の製品の状態、機械の状態、また、特に苦労したのが、不具合が発生した場合に如何に解かりやすく伝えることができるかの伝達方法等でした。体調面と機械設備の維持管理には職場全員神経を使ったのではないかと思います。新しいことに着手すればハードルはつきものですが、やってみよう!トライしてみよう!必ず越えられる!と信じることが大事だと思いました。

創業150周年を迎えた造幣局へのメッセージ

機械の自動化が進み「モノづくり」の形態も変わり、技術者の価値観が問われています。しかし、いくら高性能な機械でも操るのは人です。製品の命運を握っているのは「人の手、職人の判断力、モノを見る目」だと思います。モノづくりの基盤となる技術・技能の伝承の重要性を再認識し、これを確実に受け継いでいくためには、自分自身「何をすべきか」が問われているように思われます。

また、共同作業をスムーズに運ぶには、人と人との関わり合い、人間関係が重要なポイントであり、人とのコミュニケーションを上手く図ることが求められます。大切なことは「発信者・受信者」の立場をわきまえ、話す態度、聞く態度に注意し「心から傾聴」することだと思います。どんな組織やチームでも人間関係が適切でなければ、成果も上がらないといったことになりかねません。相互の違いはできる限り「話し合い、協力し合う」努力が不可欠だと思います。

『爽やかな 笑顔で挨拶 楽しく仕事』
笑顔の力を借りて、より良い人間関係を築いてもらいたいと思います。仕事を通じて「安全・安心」、「明るく・楽しい」快適な職場環境を形成し、自信と誇りをもって作業に取り組んでもらいたいと思います。

キャッシュレス化が進む昨今、150周年の節目の年に新500円貨幣の発行が11月と聞き、最先端の技術が施された貨幣のその出来ばえを心ワクワクさせながら楽しみにしています。また、新貨幣の製造が次に繋がる新たなスタートとなるよう期待しています。これからも与えられた使命を果たしていただくとともに、純正画一な貨幣の安定供給に努め、多岐にわたる製造部門の更なる技術の向上と、今まで培われた技術の伝承に力を注いでいただきたいと思います。